
オンラインカジノは法的にグレーゾーンと言われています。本記事ではオンラインカジノがグレーゾーンと言われている理由について、詳しく解説してみました。
オンラインカジノがグレーゾーンと言われる理由は?
オンラインカジノの違法性については弁護士などの専門家の間でも「違法」「合法」と意見が分かれています。
意見が異なるということがオンラインカジノがグレーゾーンと言われる最大の理由です。
違法と言われているのに、実際は逮捕されにくいから
オンラインカジノが違法であると主張する根拠は、刑法によって日本国内での賭博が禁じられているためです。
オンラインカジノでは実際にリアルマネーを使って賭けるので、実体としては賭博行為に該当します。したがって単純賭博罪や常習賭博罪で摘発できるという論調です。
一方でオンラインカジノをプレイして賭博罪により逮捕されたというプレイヤーは、実は出ていません。年々日本でのオンラインカジノユーザーが増加しているにもかかわらずです。
違法性があるのに逮捕者がいないという矛盾があるからこそ、オンラインカジノは法的にグレーゾーンと言われています。
警察庁は違法であると発言している
2022年10月に警察庁は「オンラインカジノは違法(犯罪)」という明確なメッセージを打ち出しました。
「オンラインカジノは海外のサーバーを経由しているから違法ではない」というオンラインカジノ合法論者の根拠も否定しています。
消費者庁もオンラインカジノの違法性を訴える
警察庁と時を同じくして、消費者庁もオンラインカジノが違法であるというメッセージを発信しました。
オンラインカジノ絡みのトラブルで消費センターへの問い合わせが増えているという事実もあるので、これ以上利用者や相談件数が増えないようにけん制するという狙いもあるのかもしれません。
岸田首相は国会でオンラインカジノが違法と明言
2022年6月の国会演説では、岸田文雄首相が「オンラインカジノは違法」ということを明言しました。
岸田総理は、「オンラインカジノは違法なものであり、関係省庁が連携して厳正な取り締まりを行う。資金の流れ等の実態把握が重要、依存症対策も需要な課題」と答えました。
首相自らオンラインカジノの違法性について言及したのは初めてのことだったので、オンラインカジノユーザーも大きくざわつきましたね。
しかし当時は新型コロナ対策やウクライナ問題、さらにその後すぐに安倍元首相の暗殺事件などが起こったこともあり、オンラインカジノの取り締まりはあまり進んでいません。
NHK番組でもオンラインカジノの違法性に言及
2022年12月にはNHKの人気番組「クローズアップ現代」において、オンラインカジノの違法性について言及する番組が放送されました。
私も実際に番組を視聴しましたが、明確に違法と主張している警察庁や岸田首相とは違って、「違法ではあるものの現行法での取り締まりは難しい」という実態を解説していたのが印象的です。
番組中には決済代行業者を直撃インタビューするという内容も放送されました。
オンラインカジノで逮捕が難しいとされる理由
オンラインカジノの違法性を簡単に整理すると、違法であることは間違いないものの実際に警察が逮捕するのは難しいというのが現状です。
オンラインカジノのユーザーを逮捕するのが難しい理由について、詳しく解説します。
- 刑法は海外サイトでの賭博を想定していない
- 賭博罪は元々胴元を取り締まるために制定されている
- 過去に逮捕されたプレイヤーが不起訴処分を勝ち取った
- 警察が捜査の糸口を掴むのが難しい
- 警察にとって立件する価値が不明
- 専門家でもオンラインカジノの違法性に対する主張は割れている
- 明らかなオンカジプレイヤーが逮捕されていない
- 著名人がCMなどでオンラインカジノをPRしている
刑法は海外サイトでの賭博を想定していない
そもそも刑法は明治時代に作られた法律であり、日本国内に運営元と利用者が共存する状況で賭博が成立するものと見なしています。
つまりオンラインカジノのように、インターネットを介して海外サイトで賭けることは、刑法上想定されていないということです。
犯罪として処罰するためには、何を犯罪とし、これをいかに処罰するかをあらかじめ法律により明確に定めておかなければならない、という近代刑法上の基本原則。
引用元:コトバンク|罪刑法定主義
憲法においては「罪刑法定主義」が定められています。
したがって法律に明確に規定されていない事項で国民を処罰することはできません。
現行法で「オンラインカジノが違法」という明確な法律が存在しない以上、法改正がない限りはオンカジユーザーを逮捕するのは難しいと言われているのです。
ブックメーカー関連の裁判も争点は賭博ではなく税金についてだった
過去にはオンラインカジノと同じオンラインギャンブルであるブックメーカーのユーザーがとある裁判にかけられたことがありました。
しかし裁判の争点となったのは「賭博罪が成立するか」という点ではなく、ブックメーカーで稼いだ利益が「一時所得か雑所得か」という点です。
ブックメーカーでの賭博行為という明確な事実があったにもかかわらず、賭博罪については一切争点になりませんでした。
参考リンク:税務訴訟資料 第270号-104(順号13464)
賭博罪は元々胴元を取り締まるために制定されている
刑法の賭博罪を定めた目的は、賭博の胴元を取り締まるためです。
胴元を賭博場開帳図利罪で摘発し、そこに客がいれば客も賭博罪で逮捕されます。
賭博罪というのは、基本的には胴元、運営者を処罰するための法律で、海外で合法的なライセンスを取っている場合、処罰することができない。それなのにお客さんだけを処罰するというのは本末転倒(後略)
引用元:ABEMA TIMES「コロナ禍の世界で注目されるオンラインカジノ 違法性の一方で摘発に難しさも 不起訴事案を担当した弁護士が語る“賭博罪の曖昧さ”」
しかしオンラインカジノはすべて海外の会社が運営しています。もちろん会社が拠点を置いている国ではカジノが合法なので、運営上の違法性はありません。
そして重要なのは日本国内の法律では国外の個人や法人を裁けないという点です。
賭博罪は刑法上この「国外犯」に該当しません。そのため、その国で合法な場合は日本からの取り締まりが非常に難しいのです。
仮に運営側を摘発せずにオンラインカジノユーザーだけを逮捕すると、刑法の賭博罪の胴元を取り締まり、利用者の刑事責任は付随的であるという原則に反することになってしまいます。
法律に定められていない条項で逮捕すると憲法違反になる
そもそも日本の憲法では国民の基本的人権が尊重されています。特に憲法第31条と第33条の条文は重要です。
第三十一条 何人も、法律の定める手続によらなければ、その生命若しくは自由を奪はれ、又はその他の刑罰を科せられない。
第三十三条 何人も、現行犯として逮捕される場合を除いては、権限を有する司法官憲が発し、且つ理由となつてゐる犯罪を明示する令状によらなければ、逮捕されない。
明確に違法と定められていないオンラインカジノの利用を理由に逮捕されることは、基本的人権の侵害に繋がります。人権を守るためにも、警察は所定の手続きを踏んで令状を発行した上で逮捕しなければなりません。
しかし根拠になる法律がないにもかかわらず、逮捕令状を発行することはもちろん不可能です。
過去に逮捕されたプレイヤーが不起訴処分を勝ち取った
2016年にはスマートライブカジノをプレイしていて日本人プレイヤー3人が逮捕されたこともありました。
そのうち2人は略式起訴による罰金刑を受け入れたものの、残る1人は弁護士をつけて徹底抗戦した結果最終的には不起訴処分を勝ち取っています。
2016年、海外で合法となっているオンラインカジノを利用した複数の日本人が賭博容疑で逮捕された。ほとんどの人は略式起訴されて罰金刑になったが、1人だけは争う意向を示し、翌年、不起訴処分を勝ち取った。
引用元:ABEMA TIMES「コロナ禍の世界で注目されるオンラインカジノ 違法性の一方で摘発に難しさも 不起訴事案を担当した弁護士が語る“賭博罪の曖昧さ”」
不起訴処分になったということは、裁判に発展しなかったということです。そして以降はオンラインカジノの利用により逮捕されたプレイヤーの事例はありません。
逮捕後に不起訴になったという事実こそ、オンラインカジノのプレイが賭博罪の要件を満たしていないことの大きな証拠と言えます。
警察が捜査の糸口を掴むのが難しい
仮にオンラインカジノが違法であると言っても、実際に警察が捜査の糸口をつかむのは簡単ではありません。というのもオンラインカジノを運営しているのは海外の会社であるためです。
国内の企業が運営していれば強制的に捜査に協力させることもできますが、海外の会社は必ずしも捜査に協力してくれるとは限らないでしょう。
日本国内で運営されているオンラインカジノがあれば100%違法で逮捕もできますが、海外企業に運営されているオンラインカジノは捜査が難しいというのが現実です。
警察にとって立件する価値が不明
警察としてはオンラインカジノのユーザーを立件することよりも、優先的に対処すべき事案が多くあります。
管轄する地域の治安維持はもちろんのこと、店舗型カジノの摘発などの方が緊急かつ重要な課題です。
警察組織も人的リソースや予算は限られているので、オンラインカジノのユーザーを摘発することは採算が合わないと考えている可能性もあります。
仮に摘発しても多くの場合は単純賭博罪となり、最大50万円程度の罰金刑に処すことしかできません。
税務調査でも小額の脱税者や滞納者が後回しになることと同じで、オンラインカジノのユーザーの摘発はどうしても優先度が低いと考えられているのでしょう。
専門家でもオンラインカジノの違法性に対する主張は割れている
オンラインカジノの利用については、専門家の間でも意見が真っ二つに割れています。
完全に違法ならば、意見が割れるはずもありません。要は解釈次第で違法なのか合法なのかという捉え方も変わってくるということです。
結局明確に「違法」と言える根拠がないからこそ、警察としてもなかなか逮捕に踏み切れないのでしょう。
明らかなオンカジプレイヤーが逮捕されていない
世の中には明らかにオンラインカジノでプレイしていることがバレているプレイヤーも多数います。
例えば顔出しでプレイ動画を配信しているYouTuberは少なくありません。しかし誰も逮捕されていないという事実があります。
また山口県阿武町で新型コロナ給付金4630万円が誤給付されてオンラインカジノに入金した田口翔被告の罪状は「賭博罪」ではなく「電子計算機等使用詐欺罪」です。
山口県阿武町が誤って振り込んだ新型コロナウイルス対策関連の給付金4630万円が全額出金された事件で、県警は29日、無職田口翔被告(24)(電子計算機使用詐欺罪で起訴)を電子計算機使用詐欺容疑で再逮捕した。
本記事執筆時点でも裁判は続いていますが、賭博罪は争点になっていません。またニュース番組でオンラインカジノプレイヤーが普通にインタビューに応じているというケースもあります。
明らかにオンラインカジノを利用しているプレイヤーも逮捕されていないので、誰にも言わず隠れてプレイしていれば、さらに逮捕される危険性は低くなると考えるのが普通です。
著名人がCMなどでオンラインカジノをPRしている
最近はオンラインカジノのCMに広告塔として著名人が登場するケースも増えてきました。
有名人 | PRしているオンラインカジノ |
吉田麻也 里崎智也 | ![]() |
橋本マナミ 魔裟斗 松井珠理奈 | ![]() |
ヒカル | ![]() |
朝倉未来 | ![]() |
把瑠都 | ![]() ![]() |
元々は深夜やネット番組だけでCMが放映されていたものの、最近は地上波でもオンラインカジノのCMを見る機会が増えてきましたね。
仮にオンラインカジノが違法ならば芸能事務所が広告塔としての起用を認めることはないはずです。
オンラインカジノのプレイは自己責任で
本記事の結論としては、あくまでもオンラインカジノの利用はグレーゾーンです。
逮捕事例はなく、逮捕される確率も低いものの100%合法とは言い切れません。今後は警察が大規模に摘発を始める可能性もあります。
したがってオンラインカジノをプレイする際は、「情報サイトで違法性がないと言っていたから」などと他責にするのではなく、必ず自己責任で行うようにしてください。
少しでも不安を感じるならば、そもそもオンラインカジノには手を出さないようにしましょう。